「ごめん。待った?」
「ううん。さっき来たから」
勤務が終わってから近くの喫茶店で待ち合わせた彼に手を軽くあげて答える
世間で言う不倫関係を2年続け
『妻とはちゃんと話つけるから、待ってて』
と言われたのはもう1年以上も前の話
その約束すら彼は覚えているのだろうか・・・・
私はこの関係にも疲れ、気が付けば別れを切り出す
タイミングばかり探すようになっていた
「どうする?これから映画でも見に行く?」
「ねぇ、宏輔?」
「ん?どうした、そんな深刻な顔して」
「奥さんとの事だけど・・・」
そう言うと彼の顔色が変わっていくのがよく分かる
宏輔はいつも奥さんとの事に限らず
自分の都合の悪い話になるとそう・・・
機嫌が悪くなるのは分かっていたけど
もう待つ事にも私は疲れ果てていた
「アイツにはちゃんと話つけるっていってるだろ?
俺の言うこと信じられないのかよ」
苛立つような口調で私へ言葉を投げつけるように言い放つ
同じ言葉を今まで何度聞いただろう
「話しつけるって・・いつになるの?」
ちょっと強気に言い返すと
「そのうち話すから」
ほら、そうやっていつも話をはぐらかす
それにも疲れた・・・
「『そのうち』って何回聞いたんだろ・・・。ごめん、私もう
疲れちゃったよ。会社も3月いっぱいで辞めることにしたから
・・・・もう貴方にはついていけない・・」
そう言うと 何か言おうとした彼に
「さようなら」
それだけ言って 振り返らず足早に店を後にした
もう振り返らない 前だけを見ていこう
全てをリセットして すっきりすればまた 新しい何かが待っているかもしれない