会社も無事に退職し
今は家の仕事を手伝いながらトリマーの勉強に日々力を入れていた
「ストリートライブ見においでよ」
そう村上さんに声を掛けてもらい 当日がやってきた
弟がストリートライブをやっているのに 私はそういった所に
足を運んだことがなく 妙な緊張感に包まれていた
手伝いを終え、鈴音と村上さんと沙羅ちゃんと4人で通り沿いにある
タケシ君の店の前へとゆるい坂道を下る
まだ春とはいえ 夜の空気は冷たくて気持ちがいい
「あ!?なんで姉貴がいるんだよ!」
振り返り驚いた顔の優と陽一くんがそこにいる
あれから数ヶ月経つというのに 私はまだあの時の返事を
返せないまま ふと目をそらしてしまう
「いーんだよ 俺がおいでって誘ったの。なんか文句あっかよ」
「べっつにないけどさぁ。やりづらいんだよ・・・」
ぼそっと呟いてる優をよそに
村上さんと陽一くんはいつも聞きに来ているらしい馴染みの人達と話している
なんとなく声を掛けづらい・・・
ちゃんと返事しないといけないんだけど
丁度 お店から抜け出してきた 黒沢さんと酒井さんが走って
皆の元にやってきた
「ごめん 遅れちゃって」
「よっし 揃ったな。そんじゃ始めるぞ」
そう言って 音を取り皆に伝える
静かな空気を打ち破るような5人の声が一気に弾け出した
しばらく静かに聴いていると
周りには5人の歌声に興味をもち
年齢層もさまざまに
人が徐々に集まって来る
知ってる5人の声なのに・・・
なんで涙が溢れてくるんだろう
周りに人がいるのも気にせずに
ただ静かにひとり座ったまま 泣いていた
「落ち着いた?」
缶コーヒーを持って陽一くんが 隣に腰掛ける
「ありがとう・・」
コーヒーを手渡され 私達2人はしばらく黙ったまま
長い沈黙を破ったのは彼からだった
視線の先のアスファルトを見つめ
「その涙の理由は聞かないけど、
泣きたくなったら素直に泣いた方がいいよ。
溜め込んじゃった方が体に悪いからね」
優しく宥めてくれる
今はその優しさが辛かった