「だからごめんって言ってるじゃない!」
「別に謝らなくたっていいよ」
「だって・・・そんなに怒る事なの?」
そう言うと陽一は立ち上がり
無言で支度をし始めた
「でかけるの?」
声を掛けても何も答えない
「ね・・」
その声を遮る様に
「悪いけど、俺これから仕事だから。
しばらく会えないけど連絡してこないでいいよ」
「ちょっとそれどういう事?なんでそこまで言うの」
出て行こうとする彼がドアの前で立ち止まり振り返る
かけているサングラスが彼の表情を隠すように冷たく映る
「別れたいんだったらそれでも構わないから。
鍵、テーブルにでも置いといて」
そう言い放つとそのまま出かけてしまった
たったあれだけの事でまさかそこまで怒るとは思わなかった
「えーっと、てつ。ちょっといい?」
「何だよ」
面倒くさそうに楽譜からの視線を安岡に向ける
「いやさ、なんか北山さん・・・オーラ出てない?」
「ん、オーラ?つか、北山いつからきてんの?」
「1時間くらい前かな。
隣のスタジオにさっきまで酒井さんとこもってたから」
「なんかあったのか?」
「それがさ、聞いても何も返事しないからおかしいんだって」
2人して1人の男をじーっと見つめながら様子を伺っている
すると安岡の携帯がメール着信を知らせ
開いて内容を確認した
「・・・ちゃん絡みだね。今 抜けても大丈夫?」
「お前の順番まであと2時間くらいかかんじゃねーの?」
ブースの中にいる黒沢の様子を伺いつつ時計を見る
「そ?じゃ、ちょっと抜けるからさ。てつ、北山さんお願いね」
そう言うとさっさと立ち上がり素早く出て行った
「はえー・・つーか、俺がなんで・・・」
ブツブツ言いながら面倒くさそうに立ち上がり
北山が座っている席とは反対側に座り声を掛けた
「なぁ」
反応がない
まぁ よくある事なのでそこは気にせずに
立ち上がり、本人の肩を捕まえて
「おい!」
今度はちょっと声のボリュームを上げて声をかけた
「なに?てっちゃん」
何でもない風に返事を返すのにも慣れたもので
「曲、煮詰まってんの?」
「いや、別に」
譜面を見ている目がやけに冷めている
なんだその反応
いつもはそんな目してねぇよな
「別にじゃねぇだろ。そんな不貞腐れた面して
そんなツラして仕事してもいい結果出ねぇぞ」
そう言うとふっと笑い、
それまで譜面にしか向けていなかった視線を俺に向けた
「ねぇ、てっちゃん」
「なんだよ」
「てっちゃんは自分の携帯とかさ中身見られたらどう思う?」

